シリーズ第5巻。「蝶々姫綺譚」で永遠に輪廻転生を続ける少女の思いを遂げさせ、輪廻を断ち切らせようとする作者の親心(?)から書かれた作品、かな。
伝奇ファンタジーには珍しい、朝鮮を舞台にとったシリーズ。作者は在日朝鮮人三世であるが、その民族的背景などから、他のシリーズより思いが深く、また丁寧に書かれているように思うのは私の思い込みだろうか。
私はメロドラマが苦手なのだが、儒教的男尊女卑の社会で健気に生きる少女が、その生い立ちなどから自分を見失いそうになる様子などきめ細かく描かれていて読みごたえがある。だからメロドラマでも許してしまう。
とはいえ、男尊女卑の枠を脱しきれないで、自分を必要とする男と結ばれてハッピーエンド、という筋立てにいささか抵抗をおぼえるのも事実だ。『月の系譜』シリーズなんか、そうはなっていないのに、ねえ。
(1998年4月25日読了)