読書感想文


大平洋の覇者 燃ゆる比島沖
中岡潤一郎著
KKベストセラーズ ワニ・ノベルス
1998年1月15日第1刷
定価800円

 新シリーズの開幕である。
 タイムマシンの開発により、パラレルワールドを乱造する輩が激増。時間管理委員会が設立されて時間操作を管理するが、委員会は実験のためにパラレルワールドを作り、歴史改変の結果を見届けるとまた分岐点に戻って歴史を元通りにし、作ったパラレルワールドを消滅させてしまう。そこに生活していた人々の営みを全て消滅させるのだ。
 そのような非人道的な行為に反対する地下組織のメンバーは、作られたパラレルワールドに介入し、委員会に反攻していく。
 今どき珍しく、SF的設定を使って、手順を踏んだ歴史改変をしている架空戦記である。
 この世界では琉球が明治維新に先駆けて独立をはたし、地下組織のメンバーの一人は日本の首相にまでのぼりつめ、日本が戦火に巻き込まれないように尽力するのである。なんと彼らのもともとの世界では、日本は日露戦争に敗れてロシアに併合され、存在しなくなっていたのである。
 改変された世界に入り込んでどうやって委員会に対抗していくのか、ここまでだけではまだ弱いような気がする。しかし、歴史を変えるということに対して作者はその責任を負っているという姿勢を読み取れるのが好ましい。この設定をどのように生かしていくのか、今後が見ものと言えるだろう。

(1998年4月26日読了)


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