読書感想文


受胎狂詩
冥界武侠譚
立原とうや著
集英社スーパーファンタジー文庫
1998年4月10日第1刷
定価552円

 シリーズ第4巻。冥界の不審な動きを調査するために天界からやってきた仙人華陽とその飼い犬の斑のコンビに、冥界で転生を待つ単純な武人耀東を加えたデコボコトリオの起こす騒動をコメディタッチで描いた伝奇異世界ファンタジーである。
 今回は耀東が身籠ってしまったところから騒動が始まる。華陽に恨みを持つ元道士のしわざで、身籠った子どもは実は妖鬼。母体(?)の生気や魄を吸い取り、産み落とされると母体を死滅させてしまう。耀東は転生できずに滅びてしまう危機を迎えたのだ。子を流す薬を求め、華陽たちは、天下より罰を得て冥界に落とされた仙女を探し始める。
 人に裏切られ、人を信じなくなった人間のどす黒い恨みの感情をわかりやすく描くことには成功している。また、かなりあっさりと人間不信が解消されていくのは安易な感じを受けはするが、恨みも解ける。それはまあ子ども向けということで割り引いて考えることは可能だ。
 しかし、ラストで耀東の子どもを流す方法がなくて困っているところになった、話が子どもだましになってしまう。大昔のギャグマンガの落ちみたいな方法で解決してしまうのである。これはあまりにもひどいと思う。そこまでの展開はこのシリーズの中では割とまともなものだっただけに、がっくりきてしまった。
 ネタバレを承知で書く。
 耀東のあまりにひどい音痴のため、産まれる時に妖鬼が苦しんで母体から逃げ出してしまうのだ。おまえはジャイアンか! しかも腹の中の子どもは身籠った時からこの歌を聞いて胎内で育っているのだよ。それなのに最後になって突如苦しむというのはおかしいぞ。こういう落ちだけは私は許せんのだよ。

(1998年5月10日読了)


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