読書感想文


連合艦隊大挽歌〈後編〉
新・太平洋戦記11
田中光二著
光文社 カッパ・ノベルス
1998年1月30日第1刷
定価781円

 長く続いた本シリーズもとうとう完結。武蔵、大和がレイテ島を目前にして轟沈。かくして連合艦隊は、ヒロシマ、ナガサキを待たずして全滅してしまった。そこで物語は終わる。それより後のことは書かれていない。第1巻で「歴史を変えた責任をとる」というようなことを書いていたのに、変えっぱなしで終わるとは解せない。
 ともかく、このシリーズはガダルカナルや特攻などをこれでもかこれでもかと言わんばかりに書き込んできたところにその特徴があるだろう。美化もせず、また悪し様にも書かずというところは一つの見識だろう。
 ただ、シリーズ全体を通して考えると、田中光二らしくないような気がした。ストーリーを追うというより、歴史上の出来事を読み物として綴っていくというような感じなのである。決して読みやすいものでも面白いものでもなかった。たぶん読者がこの作者に期待するものはかつて得意にしていた冒険小説のようなものであろう。そこをあえてこのようないささか退屈ささえ感じさせるシリーズにしたのだろうか。そこいらに架空戦記ブームが盛り上がってきたところであえてヴェテラン作家がそのジャンルに挑戦した理由を探ることができるのてはないかと思っているのだが、どうだろうか。

(1998年5月16日読了)


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