第4回歴史群像大賞受賞作。
時は平安時代の終わり頃、白河法皇と鳥羽上皇の権力争いを背景に、酒呑童子伝説や玉藻前伝説などをからめた重層的で骨太な大作が登場。
作者あとがきによると、構想17年ということ。それだけかかったからというわけではないが、登場人物ひとりひとりの描き分けなどもしっかりしており、人物造形もなかなか奥深い。作者の頭の中に雄大な作品世界があり、そこにすむ人々がちゃんと息をしているということなのだろう。
全く立派な時代伝奇小説である。
ただし、これ1本に17年かけたということは、次の作品では抜け殻のようになってはしまいかと心配になってくる。私も(スケールは違うが)賞をいただいたデビュー作から次の作品まで妙なプレッシャーがかかってしまった経験がある。これだけのものを書いてしまうと、第2作にはかなりハイレベルなものを要求されるはずだし、自分も気負ってしまいがちだ。
ぜひ、2作目の壁を突破してほしい新人作家である。
(1998年6月8日読了)