あしかけ7年に渡って刊行されてきた大長篇もあと2冊となった。大詰め近くになって、あちこちに散らばっていた主要登場人物が天下分けめの一戦に集まっていく、その布石が本書。
架空の中国でくりひろげられる戦国史をあたかも歴史小説のように綴ってきた。
主人公格の淑夜は謀士としての才を発揮、従兄にして宿敵である「衛」王の無影に匹敵する策を練る。卑しい人柄の人物により「琅」王の如白が暗殺され、戎族出身の羅旋がとうとう王位につくなど、一気に収まるべきところに人物が収まったという感じ。そうして次の完結篇につながるわけだ。だから、全体の評価はそれまで待ちたい。
夫婦や恋人が出てきても妙にプラトニックな雰囲気で性的関係を感じさせないというのがこの作家のデビュー以来一貫して持っている欠点なのだが、本書でも大牙の妻が解任したことを告げるシーンなどもありながら「どうやって作ったん?」と突っ込みたくなってしまった。これ、作者が歴史小説の大家となっていったとしてもつきまとう欠点なのであろうなあ。
(1998年6月24日読了)