表題作「機械の耳」は、いきなりデンキサンショウウオという幻の珍獣が伝説にしたがって少女の耳を食べてしまうユニークなプロローグで引きつける。デンキサンショウウオはもちろん作者の創作であるが、なかなかいいセンスをしているじゃないですか。
成長した少女はサイボーグの少年と出会い、彼の耳を失われた自分の耳につけることになってしまう。そこで彼女はこれまで聞こえなかったいろいろなものを聞き自己を確立していく。
独特の文体とゆったりした時間の流れる不思議な空間が魅力的だ。類のない才気を感じさせる。
同時収録の「かえるの皮」は河童とおてんばなお姫様のどこか調子の外れた戦い。設定や河童の性格づけなど、やはり不思議な空間を創りだすことには成功しているが、ストーリーが少々平凡であるように思う。デビュー作が傑作だと次がたいへんだ。
この作者には文庫用に長いものを書くよりも、短編を多く書いてほしいと思った。この味は独特のものがあるだけに、うまく育つことを願わずにはいられない。
(1998年7月12日読了)