これまでコメディータッチの作品を発表し続けてきた作者だが、今回はシリアス。
古代に地球を餌場とした〈宿主〉とそれを防いで閉じ込めた〈海魔〉。〈宿主〉が解放されたことにより、新たな戦いが始まった。
本編の主人公はナイーヴな16才の少年だ。彼は〈海魔〉の力を受け継ぐ者なのである。それに対して〈宿主〉の手先である妙齢の美女が登場する。彼女は主人公、瞬に〈虫蠱〉を寄生させ、〈宿主〉の支配下におこうとする。瞬の力はまだ未熟で十分に発揮できない。
脚本のト書きのような地の文など私の好みではない部分もあるのだが、読者によっては緊迫感があっていいという人もいるだろう。それはそれとして、様々な小道具を次々にぶちこみ、それらが話の芯にうまく関わりあって読みごたえのある作品となっている。そのサービス精神はこの作者ならではのものだろう。
三部作の開幕ということで、今後の展開が楽しみだ。
ところで、〈海魔〉にはレヴァイアサンというルビがふってあったが、とすると、「レヴァイアサン戦記」(徳間文庫)や「わたしのファルコン」(ソノラマ文庫)となんらかの関係があるのだろうか。壮大な世界をいくつものシリーズの舞台として用意しているようである。はじめに「レヴァイアサン戦記」を読んだ頃には感じられなかったスケールの大きさではないですか。私にとっては今後も目の離せない作家の一人なのだ。
(1998年7月28日読了)