第2回ソノラマ文庫大賞受賞作である。
江戸時代、「虚船」と呼ばれる円盤に乗って宇宙人が地球にきていた? 実際、それらしいことを書いた文献もあるそうだ。
ここでは「青奉行」と呼ばれる対「虚船」組織の面々が、からくりの大仏や特製の火器を駆使して宇宙人と戦う。時代考証をおさえたうえでキテレツなストーリーを組み立て、多彩なキャラクターを描き分け、読みやすい軽妙なタッチで物語を進めていく。
非常に達者な人だと思う。
ただ、上手すぎる。ケチをつけるつもりではない。この、なんというか、上手さが鼻につくのだ、私には。
例えば、「前口上」。「これは軽く楽しく読んで下さいよ」という意味で書かれているのだと思うが、このようなものをわざわざつけなければならないほど読みにくい話ではない。そこまでしなくても……と思う。ここらあたりは意見の分かれるところかもしれませんが。
読者を楽しませるための仕掛けをたっぷり用意して、それなりに効果はあげている。ただ、全体の流れが作り物めいているというのか、勢いで理屈抜きに読ませてくれるというタイプではないというのか。それのどこがいかんのだといわれると、それは人それぞれの好みだからとしか言いようがないんだけれど……。
それはともかく、レベルの高い新人であることには違いない。私個人のこの作家に対する評価は、2作目を読んでからもう一度考えてみたい。したがって、2作目の刊行が待たれる。まさかシリーズ化しないでしょうね。
(1998年8月8日読了)