有名な「竹内文書」「熊沢天皇」など、歴史を自分たちの都合のよいようにでっち上げたいわゆる「偽史」がある。本書ではこれらの「偽史」にまつわる事件の顛末を紹介するほか、明治末期にわき起こった南朝正閏論の経緯など、「歴史」を事実を無視して「物語」にしてしまった事例が解き明かされる。
著者はこれらを、自分で未来を作り上げる努力を放棄し、過去を捏造することによって現在の自分をかくありたいと願う姿にしようとする愚かさの例と説く。
そして、この方法論を用いて、現在論議されている「日本国憲法」の解釈についても鋭いメスを入れる。「押しつけ憲法」を根拠に改憲をとなえる者も天皇制を否定する「護憲派」もいかに自分たちに都合のよい「物語」を作っているのかを指摘するその論法は胸がすくほどである。
熱がはいり過ぎてちょっと気圧される部分もあるが、まず史料を冷静に分析することから歴史の事実を探るべきだという姿勢には説得力がある。
「架空戦記」もここらあたりに根っこがあるような気がしてきたぞ。
(1998年8月16日読了)