「探書記」(本の雑誌社)の文庫化。「本の雑誌」に連載中に読んでいた文章がほとんどだが、改めてまとまった形で読むと、著者の古書に求めるものがくっきりと浮かび上がってくる。
古書収集にともなう失敗談、楽しみ、苦しみ、珍書奇書の紹介など、著者の肉声が伝わってくるような好エッセイ。本という限られた手段から、過去にさまざまな人物がわずかにとどめた痕跡を見つけだし、それらの人々の人物像を読み手に想像させてくれる。いろんな人たちがちゃんと生きていたあかしみたいなものを残そうとしたのだなあと思い、読書という手段によってそれらが蘇るということ、それ自体に感動してしまったのであった。
(1998年8月29日読了)