読書感想文


ダブ(エ)ストン街道
浅暮三文著
講談社
1998年8月25日第1刷
定価1700円

 第8回メフィスト賞受賞作。
 夢遊病でどこかへいってしまった恋人を探しにどこにあるのかよくわからない土地「ダブ(エ)ストン」に漂着した主人公、ケン。ダブ(エ)ストンは目的地に行き着くまでに、とりあえず街道をたどっていけばいいのだけれど、それでも迷いながら探し続けなければならないのだ。いや、ダブ(エ)ストンは迷うために作られたような不思議な空間なのである。
 この現実離れした空間の構築がユニーク。おかしげな人物たちが、なんとここでは自然に生きているのだろう。大人向きの苦いユーモアがここにはある。「ダブ(エ)ストン」をさまよう人々は、生き方を定められない我々の姿にも重なり、夢を追い続ける男の切なさ、大人になりきれない男の弱さを象徴的に描き出している。
 全く奇妙な味わいの残る、これは大人の童話である。この味をいつまでも作者が失わないことを願っている。

(1998年8月31日読了)


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