戦後のマンガの系譜をたどり、そこに描かれてきた戦争観や、その影響などがどのように変化していったかを考察したもの。つまり、マンガを通じた戦後思想史ということだ。手塚治虫から「エヴァンゲリオン」まで、マンガという大衆文化に現れた時代の「気分」としかいいようのないものが、本書では浮き彫りにされている。
形にしにくい「気分」をマンガというジャンルを通じてくっきりと描き出した手法は、これまでの著者の手塚研究の流れからいっても妥当なものだといえる。それは評価できるのだが、ここに少女マンガでの「戦争」についてひとつ章がさかれていたら、と思った。決して少女マンガが「戦争」を描いていないわけではないし、女性独自の戦争描写もあるはずではないだろうか。その点で本書には欠落した部分があるように感じられる。
他に類のない「戦後思想史」だけに、残念なことだ。
(1998年9月2日読了)