室町時代後半の里見家のお家騒動を材にとり、鶴岡八幡宮の巫女、テンと比叡山からおりてきた若き雲水、カイの活躍を描く。時代背景や史実、宿曜など資料をうまく活用し、若くして大名の跡継ぎとなった若殿の焦りや私利私欲で動く後見人の動きなどを達者に描いている。
主人公二人のキャラクターがいささか現代風で、時代背景との違和感が最後までつきまとって離れなかったのが、私としては読むのに辛かったところ。例えば、カイは童顔のために年より若く見られることを嫌がっているが、そんなものはヒゲを生やせばしまいだ。あ、若い女性作家にはそこらへんはわかりにくいか。
しっかりしたものを書く実力があるだけにこれからはそのあたりにもっと気をつかっていけるようになればいいと思うのだ。
しか、読者層を考えればこういった「軽い」感じのものが売れるのだろうな。それはわからないではないのだ。しかし、そこでとどまる作家ではないと、私は思う。だからこそ、注文をつけておきたい。
(1998年9月12日読了)