エジプトで発見された六角形を組み合わせた謎の石板と、ハワイで研究する孤高の学者が世界各国の衰亡を数値にして算出したグラフの形が一致した。アメリカ国防総省幹部はこれらの意味するものを探り、その学者に対して研究を完成させるように要求する。その陰には国家滅亡の公式を利用して中国と日本を滅ぼしたいという意志があった。
カギを握る移籍をたずねた学者はそこで米軍に監禁されてしまう。これを救おうとするのは学者の息子、真吾たち3人の少年少女。真吾たちは石板の謎を解き、古代人の叡智が世界滅亡のために悪用されるのを防ごうとする。
筋立てがわかりやすく、アクションシーンにも緊張感があって、ハラハラドキドキさせてくれる。その意味では正統派の少年小説といった感がある。
難点は、世界各国の衰亡を数値にして算出できるのかどうかという点だ。これには疑問がある。国家の興亡というのは数字だけのシミュレーションで割り切れるものなのか。それをグラフにしたとしてもその線が閉じて図形を描くということの根拠が全く示されていない。嘘は嘘らしく、もっともらしい理屈でもつければいいものを。ただ「グラフがこんな図形になった」という結果だけではなんだかなあ。前提となる大事なところだからもっともらしく描いてほしかった。ここ、別にカットして学者も違う研究をしていることにすればそれほど不自然ではないと思う。
もう一点、気になるところがある。ラスト近くで米軍が小さな島で核爆弾を使用するのだが、主人公たちが地下にいたので被爆をほとんどしてないという記述がある。しかし、彼らは爆発後すぐに地上に出ているのだ。残留放射能はどれくらいだったのだろうか。
作者は職人技というのか、ある一定のレベルで面白く読ませるテクニックを持ってはいるのだ。だのに、大事なところでこれらのようなご都合主義的な部分が出てくるというのはいただけない。
なんか、最後は書き急いだのかな。シリーズ第2作目でもそのようなところが見られるようだと、シリーズ全体が破綻してしまいそうな気もする。
(1998年9月23日読了)