主人公の少女、夕南子の住む鞍井市は夕方から朝にかけすっぽりと霧に覆われている。その霧に入りこんだものは何者かに襲われて行方不明となる。夕南子もまた霧に入りこみ襲撃を受ける。それを助けた謎の少女、刈夜。白い髪の(おばーさんみたいに見えないんだろうか)オリハルコンの剣を操る無表情な少女である。
鞍井市にはネクロイドと呼ばれるゾンビたちが住みつき、獲物を探している。誰かが殺されても人々は悲しむこともない。霧の魔力で感情を奪われているのか。
刈夜は夕南子の通う学校に転入し、次々とネクロイドと化した教師たちを葬っていく。
ネクロイドたちはなぜか夕南子を狙う。彼女だけは殺されずネクロイドたちの本拠に連れていかれる。刈夜はネクロイドの首領を滅ぼすために本拠に乗りこむのだ。
「霧」がキーワード。「白い闇」という表現は秀逸。
刈夜のつっけんどんなキャラクター、下僕のダブのフォルスタッフ的なキャラクターもなかなか面白い。
かなりきっちりと書かれたオカルトアクションという気がするが、難をいえば菊地秀行に似過ぎているような気がする。それから、物語の軸が夕南子か刈夜か定まっていないので物語の構成がいささか不安定なのも気になる。
実は重要な登場人物に「狩人」を自称する鬼螺という男がいるのだが、敵か味方かは報酬で決めるというなかなか魅力的なキャラクターではある。残念ながら、このキャラクターを作者は十分に生かし切っていないように思うのだ。こいつがでてくるとかえってストーリーの流れがさえぎられてしまうように思えるのだ。シリーズ化されたらそれなりに効果的な使い方をしていくのだろうと思うのだけれど。
あと、ネクロイドの首領の正体が途中で読めてしまった。もう少し手がかりは少なめでもよかったのでは。
あれこれ注文はつけたが、キャラクター、ストーリーとも手堅くツボをおさえた作りになっているので楽しく読める小説であることには違いない。
(1998年9月27日読了)