読書感想文


蒼き影のリリス ブルー・ソルジャー
菊地秀行著
中央公論社 C★NOVELS
1998年9月25日第1刷
定価800円

 シリーズ第5冊目。
 吸血鬼と不死人の奇妙な友情、そして吸血鬼どうしが生き残りをかけて戦うこのシリーズ。新しいエピソードが始まった。
 主人公で吸血鬼の秋月は盲目の不死人リリスとあまりかかわり合いになりたくない。必ずトラブルをしょいこんでしまうからである。
 今回の秋月はシャドーとダークと名乗る二人の謎の敵から命を狙われる。リリスの関係者と思われたからなのだ。怒った秋月は、敵のアジトに直談判に行く。直談判というところがえもいわれずおかしいではないか。そこに登場したのが「ブルー・ソルジャー」という不死身の兵士。この男の行動原理は不明である。秋月たちの敵だか味方だか、よくわからない。
 戦いに傷つき、吸血鬼によく効く温泉(!)に湯治に行った秋月は、吸血鬼化した一家のトラブルに巻き込まれてしまう。唯一難を逃れた娘を守る秋月だが、その事件の影にもダークとシャドーがいて……。
 あらら、タイトルからして一話完結かと思ってたら話は終わってないじゃないの。菊地秀行はこれがあるんですよね。続きに「完結編」とかついたのが出るというパターン。今回もそれかな。
 このシリーズはこれまでなんともいえない陰影があったのだが、本書にいたってかなりコミカルなタッチに変わっている。強いのにオロオロと逃げ回っている秋月の存在感が強いからかな。それに対し、シリーズのタイトルにまでなっているリリスは場面食いという感じでポイントとなるところにだけちらりちらりと登場するのみ。かえって印象が強くなっているのだから、そこらへんは菊地秀行はうまいなあ。
 とにかく、続きを早く出していただきたい。それだけ。

(1998年9月29日読了)


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