読書感想文


秘神黙示ネクロノーム 1
朝松健著
メディアワークス電撃文庫
1998年9月25日第1刷
定価570円

 クトゥルー神話を下敷きにしたホラー・アクションの開幕。
 房総半島沖の海底から米軍がネクロノームと呼ばれる謎の怪物を引き上げる。人間のあらわれる以前にクトゥルー神によって操られていた、破壊のための機械神だったのである。
 5体のネクロノームを操れるのは5人の若者たちだけ。彼らはその少し前に起きた海難事故の際に聖痕を受けているのだ。
 5人のうち、後光院洋一と名和公はそれぞれ対立する2つの組織にいる。坊門啓は自ら新興宗教をおこし、そこを拠点に独自の活動を行う。残る2人、脇屋光頼と神足えりは、2つの組織が自分の味方につけようと狙っている。
 えりは自分のネクロノームと出会い、乗りこむことになる。そして、洋一の乗るネクロノームとの壮絶な戦いが始まるのだ。
 クトゥルー神話の巨大ロボットアニメ風展開といった感じだが、5人の若者の書き分けやネクロノームの設定など細かいところまできっちりと書き込まれた、質の高いエンターティンメントになっている。
 若干説明不足のまま物語が走り出したという印象はあるが、今後の展開によって明らかになっていくのだろう。期待は大きい。
 巻末に付された「クトゥルー神話入門講座」(東雅夫)もわかりやすくて親切だ。クトゥルーに興味のない人でも楽しめるようになっているが、この講座で予備知識を仕入れておけばより面白く読めるようになっている。

(1998年10月4日読了)


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