地球上に女性を狙って殺す「プラネリアム」という敵性生物が出現したため、女性は月に集められ、地球には男性が残るという状況にあった。月の訓練校で兵士としての訓練を受けたルノアは、最年少の大尉という栄誉に恵まれるが、それをねたんだライバルの策謀で戦地から月へと戻されてしまう。彼女は訓練校の教官となり落ちこぼれの新兵たちについてともに成長していく。
コミカルなタッチで新兵訓練を描いた作品で、実に楽しく読める。まっとうな学園青春ドラマを月基地と女の子に置き換えた作品である。
ただ、気になる点も多い。女性ばかりという環境で育った人物たちのメンタリティーがどうも「男の子からみた女の子」の域を出ていないのだ。せっかくの設定が生きていないというのか。結局は男性作家が年頃の男の子向けに書いた小説でしかないというのか。男性の目を意識しないという環境に育って、なぜ現在の高校生みたいな女の子ばかりが登場するのだ。
また、文章には独特のリズムと省略があり、最初はなんだか読みづらい。慣れてくると読めなくはないのだが。
作者は本書がデビュー作なのでやむを得ないのかもしれないけど、もう少し文章がこなれていないと小説としての面白さが半減すると思うのだ。
(1998年10月5日読了)