読書感想文


プロ野球 男の美学
近藤唯之著
PHP文庫
1998年10月15日第1刷
定価571円

 プロ野球に浪花節的物語を付与した第一人者が近藤唯之ではないかと思う。どの新刊を読んでも同じようなプレイヤーの同じようなエピソードを同じようにこれでもかこれでもかと書く。データの裏付けもなしに「プロ野球が始まって以来、○○をしたのは、この時の××しかいない」などと断言する。中学生のころに「阪神サムライ物語」(現代企画室)という本を読んでからこの方、全く変わっていない。
 それがわかっていながら、つい読んでしまう。読まされてしまう。近藤節の魔力というのだろうか。
 本書は自分のプレーに対して意地を貫いた男たちのエピソードが収められている。吉田義男がなんでもないゴロをエラーして引退を決意した話、鎌田実が日本で初めてバックトスを披露したのに観客席は全く沸かなかった話など、いかにも著者好みの話なんだよなあ。野村克也が引退を決断した時のエピソードなんか、何度読んでいるかわからない。なのに今回もひきこまれてしまった。
 近藤唯之の呪縛から逃れようと、山際淳一や海老沢泰久などを読みあさったりしたのだが、結局手にとるのは近藤唯之なのである。なんたることか。

(1998年10月8日読了)


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