読書感想文


東京ナイトメア
薬師寺涼子の怪奇事件簿

田中芳樹著
講談社ノベルス
1998年10月5日第1刷
定価740円

 シリーズ第2弾。前作「魔天楼」は文庫で今回は新書ノベルス。統一とれてへんがな。次はB6ソフトカバーでその次はハードカバーかな。最後は革装フランス綴じでナイフで切らんならんようになったりして。そんなあほな。
 エキセントリックな警視・薬師寺涼子、不運を絵に描いたような部下・泉田準一郎、優等生のエリート警視・室町由紀子とキャラクターの設定をとにかく極端にしてあるのでわかりやすく、また悪い奴はとことん悪者として描いてあるのもわかりやすい。何もここまでせんでもと思っていたら、ちゃんとそのようにしたのには意味があったりなんかするんだけど、それは読んでのお楽しみ。そのあたりのうまさというのは、亜流がどんなに頑張ってもかなわないところでしょう。
 事件は、東京の街に有翼人が登場し、それはどうやら財務省所有の建物からやってきたようだということで、涼子が前巻同様、破壊的捜査活動をやらかすということになる。
 とにかくキャラクターの強烈さにとらわれてしまうと、そのストーリー展開のうまさが見えにくくなってしまう。ただ単に時事風刺ネタと読めなくもないが、その実は人間の持つ欲望の際限のなさなんかがテーマではないかとも思える。
 いや実際、かなり細かく伏線をはっていたり無駄のない構成になっていたりするのだ。極端なキャラクターや、一見単純なストーリーでこれなら自分にも書けそうだと思わせてしまうところがこの作者のすごいところではないかと思う。そこらへんがわからない作家が下手に真似をして痛い目にあうということ。亜流はどんなに頑張ってもかなわない。

(1998年10月17日読了)


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