帯の「我慢せい。ものかきは恥を売ってお金をいただくんや」というコピーが強烈。
大阪在住のハードボイルド・ミステリ作家は元高校の美術教師。そのよめはんは芸大時代に知り合って結婚したなかなかスルドい大阪女。この夫婦のやり取りはなんともおもろい。旦那はよめはんが「リリーという名になりたかった」こととか「白眼をむいて寝る」こととかエッセイのネタにさんざん使う。また、自分が一言でやり込められることも書く。夫婦というのはおもろいなあと思う。
こういうことが書けるのは、やっぱり仲がええんやなあと思う。私がなんぼ妻ネタを書いてもここまでは書かれへんもんね。しかし、うちの妻も美術系のヒトで大阪女ですから、著者のよめはんと合い通じるものを感じてしまう。だから、わかるわかるとうなずいて読んだりもする。
よめはんとのからみもふくめて、大阪という空間が伝わってくる。大阪的なるものを知りたい方はぜひご一読を。
日本画の専門家という奥様の挿絵がなんともいい味である。なぜか絵の隅に「はにゃこ」というサインが入ってる。なんかしらんけど、おかしい。「なるほど、挿絵はよめはんの意趣返しだったのです」(あとがきより)
ところで、私の同僚で黒川氏と同じ高校につとめていた人がいて、ここには書かれてない著者の素顔を聞いたりしてるから、それでよけいに興味深かったりするのだ。こういう読み方は反則か。
(1998年10月18日読了)