読書感想文


ぬっとあったものと、ぬっとあるもの−近代ニッポンの遺跡
is別冊
ポーラ文化研究所
1998年10月25日第1刷
定価1500円

 大船観音、牛久大仏、太陽の塔、回転展望台、屋上広告、ゴジラ、ダクト建築、天守閣、山など「高いもの」、それも「ぬっとあらわれる大きなモノ」をクローズアップし、それらを通じて近代ニッポンを読み解くというユニークな試み。
 高みからまわりを見下ろす建築物は異形の存在である。それは威圧感、違和感、そしてある種のおかしみをもともなう。
 なぜ近代、人々は「ぬっとあらわれるモノ」を好んで作ったのか。様々な専門家たちが文頭に挙げたモノを個別に論じ、都市論を展開していく。
 山からの眺望が失われ、街に高層建築が立ち並んでも、畏怖される存在、別の世界を具現した存在としての「ぬっとあるもの」は拭い去ることのできない存在感を私たちに与える。それが時代から取り残され、過去の遺物となってさえもだ。
 本書を読みながら「太陽の塔」や「チチヤス・ヨーグルトの看板」を見直すと、それまでとは違ったものに見えてくる。それは滑稽であるし、哀愁すら感じさせてしまう。いわば本書によって意味を与えられたというべきか。
 「ぬっとあるもの」を通じて街の見方が変わってくる、そんな一冊であった。

(1998年11月2日読了)


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