「飢影鳥」と書いて「キナラ」と読ませる。
高校生の女の子、早波(さなみ)は背中に羽根を持っているが、それを知るのは幼なじみの親友、汀(みぎわ)しかいない。他の者には見えないか、見えていても見たものを信じられないで否定してしまう。ところが、汀の同級生、流連(ながれ)は、早波の羽根を指摘する。彼は羽根の秘密についてなにか知っているらしい。やがて早波の羽は成長し、彼女の体から分離して2羽の鳥となる。鳥たちは空腹を訴えるがその餌は人の影である。影を食べられた人々は存在感を失い、やがて死に至る。成長するまでは鳥たちは早波の生気を餌にしていたのだが、それでは追いつかなくなったのだ。
鳥たちの行動を止めようと、汀と流連、そして遠い南の島からやってきた流連の祖父たちが動き始める。早波は鳥たちの行動を自分のせいにして思い悩む。やがて大きく成長した鳥たちは獲物を求めて街を飛び始め……。
読む前は登場人物のネーミングだけで引いてしまって、あまり期待していなかったのだ。しかし、一読、これはなかなか読ませると認識を改めた。鳥たちの設定、少年少女たちの描写、読者を引きつける展開など、多少ぎこちなく、また説教臭いところがなくはないのだが、一気に読ませるだけの力を持った作品なのだ。傾向としては小早川恵美に似たものがあるかな。大傑作とはいわないが、なんとなく心をとらえる佳作で、思わぬ収穫。
(1998年11月7日読了)