第9回ファンタジア長編小説大賞佳作受賞作。
江戸時代、なのになぜかテレビやパソコンがある世界。主人公、吉原天災は仕事師で、よろずもめ事引き受けます、という男。愛妻、雛子と元気な娘、櫻がいる。遊んでばかりで稼ぎのない天災に腹を立てている櫻だが、そこへ、大店より化け猫退治の依頼がくる。一方、その店の借金の方に娘を取られた農民たちからも依頼がきた。化け猫騒動の顛末やいかに。
コメディ・タッチの小説には、私はどうしても点が辛くなってしまう。本書もそう。キャラクターで笑わせるのか、ストーリーで笑わせるのか、ギャグのみで全体を構成していくのか、いずれにしても徹底してないので、笑いが上滑りなものになっているように思う。
パソコン好きな神様が原始人にパソコンを与えてしまったためにこのような世界ができてしまった、という設定だが、それならもっと大きく文明や文化が違っていてほしい。これではただ江戸時代にテレビやパソコンがあるというだけではないか。
キャラクターでは、特に吉原天災にはもっと破天荒さがほしいところ。もっとメチャクチャなことをしてそのメチャクチャがストーリーを動かすようにした方がずっと面白くなったと思うぞ。
そこそこ書ける人のようなので、おそらくこれはシリーズ化されるのだろうが、もっとアホらしい小説を書いてくれないかと期待している。
(1998年11月23日読了)