読書感想文


癒しびとの伝説 1
菊地秀行著
ソノラマ文庫NEXT
1998年11月20日第1刷
定価476円

 大人向けの「ソノラマ文庫」創刊ということであるが、この本、従来の「ソノラマ文庫」と同じところに置いてあったぞ。それでは意味がないではないですか。内容も学園ものなので、わざわざ「NEXT」と銘打った意味がないような気がするが、どこまで大人の読者に食い込めるか。
 私立蘭東高校に君臨する端麗な美貌と凶暴な精神をあわせもった若者、霧道歩。彼の学校にやってきた新任教師の竜地大介は、歩の脅威を恐れない不思議な雰囲気をもっていた。やがて歩をつけ狙う謎の敵が登場。そこには必ず大介の姿が……。
 異界に連れ去られた人々を現世に連れ戻す「戻しびと」とそれらの人々が遺戒で受けた傷を直す「癒しびと」というアイデアが面白い。ただ、ストーリー展開は謎を小出しにして読者を引っぱっていってはいるが、いささか単調であるように感じられる。
 異界とはどのような場所なのか。「戻しびと」である歩をつけ狙う敵の真の姿は。そういったところが次巻以降解き明かされていくことになるだろうから、ちゃんとした評価はまだ下し難い。
 ただ、他の菊地作品に比べるとキャラクターにユーモアというのか味がないのが苦しいかな。

(1998年11月24日読了)


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