1998年の冬、世間がバブル景気に踊り始めた頃、地味なOL秋穂が巻き込まれた奇妙な事件を描く。
秋穂は二人組の強盗に入られ、そのうち一人に犯されるのだが、どうやら強盗の狙いは別のマンションにいた他の女性であったことが、現場に残されたメモによってわかる。つきあっていた上司に捨てられたばかりの秋穂は、新たな恋をする。妻子のいる同僚の川瀬である。彼に連れられて行った競馬場で強盗二人を見かけた彼女は、その居場所を突き止める。しかし、逆に二人組は居場所を失いなんとなく秋穂のマンションに居候をはじめてしまう。妙な共同生活の中で秋穂はそのうちの一人、自閉の青年武生にひかれていく。
ミステリの謎解きの部分より、平凡なOLが、バブルに踊らされていく世相とは逆の方向に、自分の真に必要としている相手を見つけていく様子が中心となっている。そういう意味では常に「女性」をテーマとしている作者の一連の作品につながらなくはないのだが、かなりハートウォーミングな話で、作者のレンジの広さを感じさせる。
私は養護学校の教師という職業がら自閉の青年の扱いなどを気にしてしまうのだが、本書の記述はかなり正確で、作者がよく理解した上で書いていることがわかってなんとなく嬉しい。
(1998年11月28日読了)