読書感想文


蒼白の城XXX
田中啓文著
集英社スーパーファンタジー文庫
1998年12月10日第1刷
定価552円

 宇宙海賊ラ・ビットを父の仇と狙う若き特命警察官ブルーは、脱出不可能な犯罪者収容所「XXX」に犯罪者をよそおって潜入する。「XXX」から命令を出している「ラ・ビット」のボス、「ギザ耳」の正体を確かめるという任務である。彼の同僚である恋人ユミは、やはり宇宙海賊であるシルバーの情婦となりその情報を特命部に送るという任務が与えられる。
 任務を至上のものとするブルーと、ユミの別れ。まだ子どもであるブルーはユミの受けた心の傷を理解できなかったのだ。
 「XXX」に収容されたブルーは、そこで逮捕されたシルバーや、殺人狂のサドラー大佐、一流スナイパーのマリアといった個性的な人物たちと出会う。彼が心を許せるのはコンピュータ内に閉じ込められた人格のジュリアだけ。しだいに孤独にうちひしがれていく彼の前に脱走騒ぎが起こり……。
 ブルーがその純粋さゆえに翻弄されていくさまや、脱出不可能な収容所内の人間模様など、見どころはいっぱい。あまり登場しないユミの存在に心ひかれる。
 多くの謎をちりばめながら物語は次巻へと続く。あれはああじゃないか、これはこうじゃないかと思うだけでやきもき。続きを早く読みたい!

(1998年11月30日読了)


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