NHKスペシャルで放送されたものをまとめた単行本の文庫化。
実業家と結婚して財を貯えた宋靄齢、孫文に嫁して革命に一生を捧げた宋慶齢、蒋介石の妻となり国民政府のトップレディとして活躍した宋美齢の三姉妹を描いたドキュメンタリーである。特に慶齢に対する靄齢と美齢の最後まであいいれることのなかった関係を軸にして近代中国の歴史を浮き彫りにしようという、野心的な試みといえる。
国民政府とアメリカの協力関係に果たした美齢の大きな役割や、革命のシンボルとして敵対する陣営双方から味方につくことを求められ、それでもなお孫文の遺志を貫き通していった慶齢の生き方などが、まるで物語のように書かれている。
国民政府が実は「宋王朝」と呼ばれるほど、宋一族の支配下にあったことなど、教科書では知ることのできない一面を伝えてもくれる。
歴史の流れや姉妹の動きを追うことが中心になり、もう少し掘り下げてほしいところをさっと流してしまったりしているのが残念であるが、中国の近代史をこれまでとは違った視点からとらえ直していて、興味深く読めた。
(1998年11月27日読了)