読売新聞夕刊(大阪版)に4年にわたって連載されたものが1冊にまとまった。
ラジオ放送の開始から現在に至るまでの、放送における笑芸の移り変わりを膨大な資料と証言を駆使してまとめた労作でもある。
初代春團治のラジオ出演事件など、定説をくつがえす真相も盛り込まれており、最新の研究成果が惜しげもなくつぎこまれている。
これ1冊で上方演芸の放送における流れをつかむことができる上に、時代とともに変化していった笑芸の有り様もよくわかるようになっている。ただ出来事を羅列しているのではなく、時代ごとに人物をピックアップしてあるので、読み物としても面白く読めるようになっている。
80年代の「マンザイブーム」にからんで東京の放送関係の部分になると取材が行き届いていないせいか若干前後関係があいまいになっている部分もあるが、それほど気にしなければならないほどのことではない。そのあたりのことは再度検証されることもあるだろう。
上方演芸に関心のある人は手元に置いておいて字引きでもひくように読むのもよいかもしれない。それだけ視点にかたよりのない好著といえるだろう。
(1998年12月20日読了)