夢の宮シリーズ第11弾(13冊目)。
鸞王、珂霄(かしょう)は幼なじみで血縁の娘、麻女朱(ましゅ)を正妃としてむかえるが、婚儀の後、謎の行動をとるようになる。妃の兄で王の親友でもある皋悦(こうえつ)は珂霄の謎を探る。どうやら砂漠に行っているらしいことをつきとめるが、砂漠への道で開かれていた市である商人から珂霄そっくりの若者に引き合わされる。巫女によると、珂霄には双児の弟がいたが幼児に行方不明になったという。
珂霄と結ばれる縁にあったのは麻女朱ではなかったのか。珂霄が心から愛しているのはいったい誰なのか。珂霄の双児を含めた4人の運命はどのように変化していくのか。
今回はこれまでといささか趣が違い、夢の宮よりも城外での動きが多く、人々の結びつきも純粋な愛情だけではない独特の因縁に左右されるという形になっている。
王の道ならぬ恋の苦しみなどこれでもかとばかりに描いており、シリーズ中でも特に重苦しい感じがある。そういう意味では、本書はこのシリーズの分岐点になるかもしれない。そんな予感がするのである。
(1999年1月9日読了)