読書感想文


真夜中の死者−イリュージョン−
矢口敦子著
光文社 カッパ・ノベルス
1999年1月30日第1刷
定価819円

 インターネットのホームページで「自殺日記」というサイトを開いている「明日香」という少女が自殺し、ホームページが閉鎖された。掲示板に書き込みをしていた常連の一人、大学生の一也はかつてオフ会をした常連たちとともに「明日香」を悼み、彼女の生家を訪ねるがかつて「明日香」から知らされたという住所にはそのような自殺した者は誰ひとりいなかった。「明日香」は実在していたのか。そして、その常連たちが次々と自殺していく。一也が知った「明日香」の真実とは……。
 電脳空間にひそむ仮想の人格による殺人……ではなく、ごくまっとうなミステリ。もっとも、インターネットの活用法などはミステリのガジェットとしてはあまりこなれていないという感じがした。柴田よしきが非常にうまく処理しているのを読んだことがあるだけに、少々物足りない。現実の方がもっとえげつなかったりするように思う。
 ところで、カバー袖に書かれている作品紹介には「サイバーホラー」と書かれていたので、SF的な話かと期待して読んだので、ちょっと肩すかしを食らった感じ。ガジェットにインターネットを使っているだけで「サイバー」と書いたり、ミステリなのに「ホラー」と書いたり。「ホラー」と書けば売れると思ってそうしたのかな。ちょっと出版社の姿勢はどうかなーと思った。まあこれは作者には関係のないことではあるのだが。

(1999年1月30日読了)


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