読書感想文


もてない男−恋愛論を超えて
小谷野敦著
ちくま新書
1999年1月20日第1刷
定価660円

 ここで扱われる「もてない男」はつまり恋愛対象として女性になかなか見てもらえない男のことであり、どんな女性とでもタダでセックスできる男のことではない。テレビや小説、流行歌に至るまで恋愛を扱ったものが主流であり、「もてない男」は何か恥ずかしい存在であるかのように扱われている。しかし、もてないということはそんなに恥ずかしいことなのか。
 ここでは「童貞」「自慰」「恋愛」「嫉妬・孤独」「愛人」「強姦・誘惑」「反恋愛論」をキーワードにして、「恋愛は誰にでも可能であり、それのできないものはダメなやつ」という嘘に対して敢然と挑戦している。
 古今東西の文学を例にあげ、文学はいかに「もてない男」を描いてこなかったのかを示す。「もてない」という観点から恋愛論を解体し再構築するという野心的な試みといえる。形としては「エッセイ」風である。著者がいかにもてなかったかという怨みがこもっているだけではなく、その自分を客観視して文化論にまでもっていく。そこがおみごと。
 既存の恋愛論に飽き足らないものを感じている方にお薦めしたい。

(1999年2月7日読了)


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