読書感想文


コールド・ゲヘナ
三雲岳斗著
メディアワークス 電撃文庫
1999年2月25日第1刷
定価490円

 第5回電撃ゲーム小説大賞銀賞受賞作。
 砂漠の惑星ゲヘナが舞台。ドラゴンたちがわがもの顔に飛びまわり、人間たちはドラゴンの住まない砂漠地帯で暮らしている。ドラゴンを倒せるのは人形兵器デッドリードライブのみ。しかし、これを操れるのは特別な能力のある者に限られている。
 主人公の〈レイジー〉バーンはそんな「デッドリードライブ乗り」の一人。いつも人語を解する猫、メルとともに行動する。彼らはドラゴンから救った空母に監禁されていた少女、アイスと出会う。彼女もまた「デッドリードライブ乗り」に必要な能力のある人間であった。彼女の父フレイマンは優れた技術者であるが秘密組織「教団」にさらわれる。「教団」の本拠にはアイスそっくりの「デッドリードライブ乗り」フロスティや謎の美女、切音らが彼らを待ち受けていた。バーンたちは隠していた真の力を発揮する。
 謎をちりばめながら、その解決はほのめかし程度で全てが明らかになるわけではない。どうもシリーズの1冊めという感じなのだが、新人賞の受賞作なのだから、本来ならその1冊でちゃんと完結してしかるべきだと思うのだが。出版社の戦略としてシリーズとして売り出すことのできるものに賞を与えているということなのかな。未完成といっていいものに賞を与えていいかどうかと思うのだが、現在の出版状況を考えると、こういう戦略もありなのかもしれないな。
 作品自体はロボットアニメのノヴェライゼーションというような感じ。巨大人形兵器、ドラゴン、謎の組織、美少女、格闘、陰謀などなど目をひくガジェットを寄せ集めたという印象を受けた。それらはかなりうまくつなぎ合わせられていて肩のこらないアクション小説にはなっているのだが、とにかく解かれるべき秘密が明かされていないのだから、なんだか主人公たちがただ戦っているというだけに終ってしまっている。もう少し厚めでいいからそこらあたりをちゃんと書き込んでほしかった。

(1999年2月14日読了)


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