「SFバカ本」シリーズの最新刊。本書より文庫書き下ろしのシリーズとして再出発となる。
全体の印象でいえば「バカSF」というのは意外に少ない。特に松本侑子「サイバー帝国滞在記」はテーマもストーリーも非常にシリアス。
バカバカしさでいえば梶尾真治「奇跡の乗客たち」の板前が外科手術をするというアイデアが秀逸。岡本賢一「12人のいかれた男たち」は下ネタながら異星人にとって食われそうになる宇宙船乗組員たちのどたばたで笑わせる。でもタイトルは変えた方がいい。
山下定「リストラ・アサシン」のリストラの対象に指定されながら退職しないと社員たち全員から命を狙われるというアイデアもバカバカしいのだが、展開がシリアス過ぎるのでアイデアのバカバカしさが目立たなくなっている。
ほらのふき方では牧野修「躍るバビロン」がすごい。屋敷島とか家具人間とかよくまあここまでとんでもないことを考えたものだ。人間の存在価値とはなにかというところまで風呂敷を広げていて、これこそ「バカSF」の醍醐味ではないか。
全体に粒が揃っていて、SFアンソロジーとしては高い水準であると思う。ただ、「バカ本」としては「バカ」に徹し切れてないような、そんなところがちょっと残念。
(1999年2月20日読了)