第5回電撃ゲーム小説大賞金賞受賞作。
近未来、大阪府の南端に作られた「大阪学園都市・阪南」はその名称とは裏腹に、暴力団をバックにもつ「白虎隊」に牛耳られていた。空手の達人、充月円たちが通う岬高校には「岬高六将軍」と呼ばれる「白虎隊」の配下が支配している。「白虎隊」の「四天王」にしろ「岬高六将軍」にしろ、それぞれが柔道やボクシングなどの強者。一般学生たちは自分たちが支配されていることに無関心である。円らは「岬高パルチザン」を結成し、「六将軍」の支配をストップさせようとする。
そこへ飛び込んできたのは小柄な少年、蒼三郎。彼は古武術の使い手で、「六将軍」や「四天王」を次々と倒していく。
一読、「梶原一騎や!」と思った。愛とは戦いである。戦うことは己を磨くことである。何ごとにも無関心にならず、自分の生きる道を見つけてそれに邁進せよ。そういったメッセージに満ち満ちているのだ。格闘シーンの描写の細かさなどはなかなか読ませるし、敵役のキャラクターもバラエティに富んでいて面白い。とはいいながらも、こちらが気恥ずかしくなるほどの熱血メッセージに私のようなおっさんはついていけない。この説教臭さはなんなんだろうね。同じことを親や教師が言ってもたぶん反発するだろうに。
だからといって、格闘ばっかりだとこれも困るのだが。もう少しメッセージをストーリーの展開だけで示せるようになればいいのだけれど。
あと、「笑く」と書いて「なく」と読ませるのはさすがに無理があるように思うのだが。このセンスはやはり「梶原一騎」的かも。
(1999年2月22日読了)