読書感想文


さらに大人は・が・の問題
五味太郎著
講談社
1999年2月23日第1刷
定価1800円

 「大人は・が・の問題」(講談社)で子どもをとりまく環境に対して素朴な疑問を大人に対してつきつけた五味太郎が、その続編を書いた。
 今回はさらに深く大人の抱えている様々な問題を指摘している。王様は裸と指摘した子どものように。
 子どもに関して多くの問題が起きているが、実はそれは「大人の問題」である。子どものことを問題視するが、実は「大人が問題」なのだ。そして、ルールに縛られ人目を気にしそれを子どもにまで適用したがる「大人は問題」なのである。
 著者は「私」を見つめ直すことにより、「公」の意味を考える。学校、家庭、結婚、老人、そして人権などいろいろな切り口で大人社会の「なんか変だな」という部分を指摘していく。
 著者はかなり単純化して現代社会の問題をとりだしている。しかも、わかりやすい語り口で。だから、読み手もなんとなく問題点をわかったような気がしてしまう。そういう本である。
 しかし、著者がしているのは問題提起なのだ。そこから先、複雑にからみ合った根の深い問題をどのように解決していくかは、読み手一人一人の行動にかかってくるだろう。問題提起が単純(に見える)であればあるほど、問題解決はそう簡単にいかないのだ。
 絵本で見せる五味太郎のユニークな個性の根本にあるものがなんであるか、本書はそれを明示してくれているのである。

(1999年2月25日読了)


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