読書感想文


ナノハザード
半田克己著
メディアワークス電撃文庫
1999年3月25日第1刷
定価510円

 新人のデビュー長編。分子機械(ナノマシン)……通称ナノ虫の実用実験に成功した研究所で、今度はナノ虫を自己増殖させる実験が始まる。しかし、ある研究者のミスでナノ虫は実験室から出てしまう。しかも、その失敗でナノ虫に停止命令を出すことができない。ナノ虫を破壊するには放射線を照射すればそれでよい。ところが、閉鎖した実験施設の中には見学にきていた3人の高校生が閉じこめられていた。ナノ虫を外部に出してしまう危険を冒して3人を救えば、ひたすら自己増殖するナノ虫に地球が分解される可能性がある。3人の命を犠牲にして地球を守るべしとする者、また、なんとかしてナノ虫を全滅させる方法はないかと知恵を振り絞る者。中に閉じこめられた祐二たちもまた、ナノ虫の恐怖と戦いながら、脱出に向けて苦闘する。救出作戦は成功するのか。
 最近はやりのナノマシーンを使ったパニック小説。ナノマシーンの扱い方に特に目新しいところはないけれど、限られた時間にあらゆる手をつくして主人公たちを救出するという展開は手に汗を握らせ、ヤングアダルトの枠組みでいえばナノマシーンのアイデアを十分生かしているといえるだろう。パニック小説の勘どころはきっちりと押さえてるんではないかな。
 そんな研究所に高校生を見学させるという理由づけはちょっと苦しいものがあるけれど。
 登場人物の描き分けなど類型的といえなくはないがよく描けているのではないか。新人のデビュー作と考えれば、一定のレベルに達してると思う。注目していきたい作家がまた一人登場した。

(1999年3月13日読了)


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