著者は関西に生まれ育ち、大学以降を東京で過ごし、神戸大学に助教授として”里帰り”した人。専門は文法論。
大阪のことばを文法的に分析し、その用法などから大阪人の気質や文化を解き明かしていく。一見もっさりしていて回りくどいように思われがちな大阪のことばだが、実は合理的で洗練されたものだと指摘する。「ねん」「やん」といった接尾語の意味するもの、「まあ」という言葉の持つ効力、「よう言わんわ」という表現の意味するところなど、明晰に論証されていく。
自分たちの文化を見つめ直すという意味では大阪、関西の人間が読むべきなのだろうが、大阪に住む異郷の人が大阪文化を理解したり、逆に東京などに移った大阪人が自分たちがよそとどう違うのかということを考えるのに大いに力になる本であると思う。
人が言葉によって考える以上、その言葉の持つ性質が思考方法などを規定していくということを示した好著。
(1999年3月17日読了)