情報化の進んだ未来社会で、軍と企業が「HF(ハンティング・ファルコン)」というAIを組み込んだ兵器を開発している。AIのベースにはヴァレリアという女性の記憶を使い、ヴァレリア自身はサイボーグとして再生され、過去の記憶を消されていた。彼女の過去はAIのベースである「ヴァレリア・ファイル」に保存され、軍と企業のコンピュータに保管されている。
埋もれたプログラムをネットの中から発掘する〈マイニング〉で生計を立てているMKはヴァレリアと出会い、彼女の過去を取り戻すためにハッキングして「ヴァレリア・ファイル」に侵入することになる。ネットを探る間に遭遇したハッカー、自走地雷OLレティや荒事を専門とするアウトロー・ビジネスマン、ジョーズたちも仲間に加わり、ヴァレリアの過去を取り戻すことに成功したMK。しかし、まだ残されている「ヴァレリア・ファイル」を破壊しないとHFが量産されてしまう。月にある企業モガミ・オルドレイ社に潜り込んだヴァレリアは「ヴァレリア・ファイル」を破壊するプログラムを起動できる状態にもっていくが、所長の川崎はヴァレリアをとらえて彼女の外部記憶装置から「ヴァレリア・ファイル」を再生しようとたくらむ。かくして、MK、レティ、ジョーズたちは3人3様の方法でヴァレリア奪還作戦を実施するのである。
10年以上前に角川文庫、スニーカー文庫より5冊シリーズで出た作品を2冊に再構成した再刊。しかし、内容は古びてはおらず新刊同様に読める。いかにシステムが進歩しようと、マシンを動かすのは人間だというテーマが貫かれているからだろう。レティの爆走ぶりは当時読んでいても痛快であったが、よく考えてみると、ヤングアダルト小説である本書以降、作者の文章がぐっと読みやすくなったような気がする。そういう意味では記念碑的作品である。下巻ではヴァレリア奪還作戦が実行される。これは上下巻一気に読んでほしいところだ。
(1999年6月4日読了)