クトゥルーをモチーフに、高校生たちの揺れ動く心を生き生きと描く。と思って読んでいたら、彼らのもつ暗黒面が白日のもとにさらされ、そこに古き神の目覚めが関わってきて一気に話が急展開してしまう。そこまでの主人公たちの淡い恋情が切ない分、ラスト近くの展開はみごとに効果的。
これまで作者の作品は何冊か読んではいるが、とうとう鉱脈を掘り当てたかという印象を受けた。シリーズ化が決まっているようなので、次巻以降、古き神の本格的な復活がどのように描かれるかが楽しみだ。というよりも、そこで失敗したら本書の面白さまで死んでしまう。
ところで、帯の惹句に「新感覚モダンホラー胎動!」とあるが、クトゥルーというのはモダンホラーなのか? ホラーにくわしいわけでないのでそこはよくわからんけれど、違和感があるなあ。
(1999年6月6日読了)