読書感想文


月と貴女に花束を
志村一矢著
メディアワークス 電撃文庫
1999年6月25日第1刷
定価570円

 第5回電撃ゲーム大賞選考委員特別賞受賞作。
 人狼一族とそれに復讐しようという吸血鬼との戦いを軸に、ひたすら「家族愛」にこだわったデビュー長編。
 いきなり可愛い女の子が妻として同居したり、登場人物のほとんどがどちらかの親を亡くしていて、兄弟への愛情を中心とした「家族愛」に飢えていたり、人狼一族の上に〈院〉という正体不明の(作中になんの説明もない)”組織”があったり……。
 今どきのヤングアダルト小説のヒット作によくある要素をどんどんぶち込んでいるが、それ以上のことはできていないという印象が残った。”愛”を”戦い”で勝ち取るという展開はもう梶原一騎の世界。
 読者層を考えたらこれで十分なのかもしれないが、そこにただよう説教臭さが、私には辛い。作者なりに工夫しているのは認めるのだけれど。

(1999年6月11日読了)


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