読書感想文


朱い竜
鹿原育著
小学館キャンバス文庫
1999年7月10日第1刷
定価524円

 主人公、中島竜平は「戒霊師」。霊を払う能力を持っているという、オカルト・アクションにはよくある設定だが、これがちゃんと修業して免許をもらわないと仕事ができないという設定になっているところが面白い。上から「殺霊師」「戒霊師」「退霊師」という序列があって、「朱雀霊術師連盟」という組織がそれを認定する。ちゃんとお免状をもらうシーンもあるのだ。
 ストーリーは「竜朱」という名を与えられた竜平の初仕事。連盟に敵対する謎の異次元生命体〈険司〉と、連盟に協力する異次元生命体〈侠司〉がいて、竜平はいきなり刹那なる〈険司〉に力を試されるはめになる。目立たない女子大生が竜平の兄、匠平に恋をするが相手にされぬまま事故死。振り向いてほしかったという念を残していたのを刹那に利用され、竜平の家族を襲う。
 竜平はまだ一人前ではなく、師匠の青竜に対してことごとく反発するのだが、そういう独り立ちしようとする子どもによくある行動などを書き込み、シリーズを追うごとに成長していく主人公の姿を読者が楽しめるという趣向になっているのだろう。
 ストーリーの単純さなど気になるところもあるが、けっこう楽しんで読めた。できれば〈険司〉と、〈侠司〉の設定をぐっと掘り下げてほしい。ここの設定だけがなんともあいまいで都合がよすぎるように感じた。

(1999年6月13日読了)


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