中国返還直前の香港が舞台。やんちゃ坊主の高校生、風守太一は母に「双子の弟」を探してこいと言われて親友の長岡健治とともに香港へ。そこで彼を待っていたのは、彼と「双子の弟」月緒を奪い合う二つの団体。どうやら彼ら双子は〈河図(カト)〉〈洛書(ラクショ)〉と呼ばれる世界を壊滅させ、そして再生させるという役割を担った特別な存在だというのだ。
風水などの豊富な知識をバックボーンに、しっかりした設定。なにも考えていない太一というキャラクターの造形は男の子というものをよく観察しているなあと感心した。
中国返還後、香港を守る〈竜〉は誰の手に渡るのかというところが見どころなのだが、残念なことに物語は全てが解決しないまま決着をつけてしまっている。「あとがき」でも続編については触れられていない。香港が返還されて一定の時期が過ぎた今だからこそ、雑誌連載がこうやって1冊にまとめられたのを機会に、続編を書いてほしいものである。
(1999年6月13日読了)