作者が久々に挑んだ本格伝奇アクション。
舞台は平安末期の京都。中国より渡ってきた方士と少年が、平清盛を呪詛する崇徳院の霊とそれに従う天狗の相模坊や配下の美女妖怪たちと戦う。
主人公たる方士たちはこの物語のオリジナルのようであるが、相模坊は「雨月物語」にもその名を残す存在であるし、平重盛ら歴史上の人物もしっかり書き込まれている。架空の人物と実在の人物とのからみもうまい。戦いの結末が史実にちゃんと関係してくるところなど、おさえるべきところをちゃんとおさえているので、納得がいく。
欲をいえば、主人公たちにもしモデルがいるのなら(作中、彼らは日本での名のみを名乗り、中国での本名は名乗らない)その正体を示唆するような部分も欲しかった。当時の日宋の交流などを踏まえた上で混血の中国人を主人公に据えているのだから、モデルがいるのだろうと思うのだが、私の勉強不足でそれがちょっとわからないのが悔しいなあ。
中国の方士が日本の天狗と戦うという発想がユニークで、この設定は成功していると思う。やはりこの作者の本領はこういったシリアスな作品にあるのだということを再確認した。これを機会に、ただのおちゃらけみたいなアクションコメディはやめて、本格的な伝奇アクションに本腰を入れて取り組んで欲しいものだ。
(1999年6月15日読了)