読書感想文


活字狂想曲 怪奇作家の長すぎた会社の日々
倉阪鬼一郎著
時事通信社
1999年3月20日第1刷
定価1600円

 話題のエッセイ集を遅まきながら読む。
 著者がサラリーマンにはなじまないと思い続けながらも、食いつなぐために勤め続けた印刷会社。校正係をしながら見つめ続けた業界、会社、同僚たちの様子をシニカルに、そしていくぶん自嘲気味に綴った〈会社の民俗誌〉、というわけ。
 大上段に振りかぶって日本社会をぶったぎるというわけでもなく、特殊な例をとりあげて笑い飛ばすというわけでもない。自分を「奇人」「変人」と規定しておいて、そこから見た「まとも」な社会の異常さを見せている。自分の「変人」ぶりをやや強調しすぎている気もするし、またそのようにふるまおうと意識しているという感じもあるが、そういうスタンスだから本書は成立している、というようにも思う。ここらあたりのバランスは絶妙。
 実は、私は著者の小説は未読。小説の前にこういうエッセイを読んでしまうと、こちらのイメージにとらわれてしまいそうだ。先になにか小説を読んでおくべきであったか。

(1999年6月20日読了)


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