ヒトラー・ユーゲントに焦点を当て、ワイマール期から盛んであったドイツの青少年運動(ワンダーフォーゲル運動などの青年団活動)とそのナチ化、ヒトラー・ユーゲントの実態やそれがナチス体制下でどのような役割を果たしたかなどを検証する。
ヒトラー・ユーゲントへ反逆した青年たちやヒトラー・ユーゲントの学校教育との連動の失敗など、必ずしもナチスの思惑通りにこの団体が働いていなかったことや、女性の自立を促すという意外な役割を果たしていたことなど、著者は当時の青少年たちの証言や文献をまじえて論証している。そして、その実態を明瞭に描き出してみせる。
日本の少国民教育の比較などがあればより興味深かったのだが、そこまでねだってはいけないか。
リーダー育成が時間的に十分にできなかったことや、ユーゲントの青少年を兵士として出征させていく過程など、急ぎすぎた青少年の組織化や、強制的に事を進めることの困難なことなど、現代社会にも反映できる歴史の証言がここにある。第二次大戦史を青年運動史にからめてとらえなおした好著である。
(1999年6月23日読了)