読書感想文


玩具修理者
小林泰三著
角川書店
1996年4月25日第1刷
1997年8月30日第7刷
定価1260円

 今頃読むなんて遅すぎる。そうかもしれない。これまで読まずにほったらかしておいた自らの不明を恥じるべきだろう。発売当初から高い評価を受けている本書に対し、今さら私が付け加えるべきこともないだろう。
 表題作「玩具修理者」では生物と無生物を、中編「酔歩する男」では時間概念をそれぞれカオス化し、読者の意識までを混沌とさせるみごとな手腕。それは背後に緻密な計算をした上で構築された混沌なのだ。
 今生きている自分は何者であるか、思わず振り返らずにはおかれない。そこにわき起こる恐怖が、読み手をとらえて放さない。
 現在は文庫化もされている(実は私は小林さんから文庫版をいただきました。小林さん、ありがとうございます)。未読の方はぜひ読んでいただきたい。
 なんで今まで私はこの本を読んでへんかったんや。全くもってお恥ずかしい。

(1999年6月26日読了)


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