落語の歴史、用語、時代背景、ネタやオチの分類などを青少年向けにわかりやすくまとめたガイドブック。ネタの紹介が東京落語にかたよるのはしかたないか。まあ、この種の本にしては上方落語についてもある程度言及されているとはいえるだろう。
全体に堅苦しいという印象が残るのは否めない。入門書としては本書よりも「落語と私」(桂米朝/文春文庫)の方がお薦めできる。本書はある程度聞き込んだ時点で生じるであろう疑問に答えてくれる本、という感じがした。
ところで、本書では「与太郎」を知的障害者として紹介し、それらが生活の一部であった江戸の人情を評価するようなことを書いている。上方落語を聞き慣れた私には少し違和感がある。「アホ」という概念が東京落語にはないのかな。上方落語であると「与太郎」ではなく「われわれ同様という奴がアホなことをいたします」となる。演者自身がどこにでもいる「アホ」同様であるとしているわけで、聞き手も共感しながら笑っているというように思っていた。ここらあたり、やはり文化の違いというものがあるんやなあ。
(1999年6月26日読了)