作者の第1長編は、なんと本格ミステリ。
密室にいたはずの被害者が、家の外で死んでいたという趣向。故に、「密室・殺人」と中グロが入るというわけ。
探偵の四里川陣と助手の四ッ谷玲子が事件解決にあたるのだが、四里川は決して関係者の面前に姿を現さない。実はそこには四ッ谷玲子の過去の因縁がからまっていてホラー小説らしくはなっている。本格ミステリとホラーの融合ということで凝った仕掛けが施されているが、私にはそれを満喫するまでには至らなかった。伝奇ホラーの味付けもしていたりしているのだが、全体に理に落ちていてホラーの味付けがきいてないように感じた。
気持ち悪くて恐い推理小説というと、乱歩や横溝のような昔のものに秀作がある。むろん、作者はそれらとは違った方向を目指して本書を書いたのだろうとは思うのだが。作者の意図と作品の与える印象にずれがあるように感じられる。趣向自体はなかなか面白く、できが悪いというわけではない。ただ、ちょっと作者の資質とは違う作品であるというように思うのである。
(1999年7月3日読了)